「歯周病が及ぼす身体全体への悪影響とは」
【歯とお口の健康】
歯の健康を保つことは、単に食べ物を咀嚼するということだけでなく、食事や会話を楽しんで周囲の人とのコミュニケーションをはかるなど、豊かで快適な人生を送るために必要不可欠です。そこで気をつけたいのが初期には自覚症状もないが、進行すると歯を失う原因となる【歯周病】です。その歯周病が近年は様々な研究結果から、単に口の中の病気というだけでなく多くの全身疾患や状態に影響を及ぼし、その発症や進行のリスク因子になることが明らかにされています。
【歯周病と全身疾患との関わり】
●狭心症・心筋梗塞
これらの疾患は動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、塞がったりしてしまい死に至ることもある病気です。動脈硬化は、加齢の他、高脂血症や糖尿病、喫煙、高血圧や不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされてきましたが、歯周病菌も動脈硬化を引き起こす原因の一つと言われています。 ●脳梗塞 動脈硬化は心臓だけでなく脳の血管にも起こります。歯周病の人はそうでない人の2・8倍脳梗塞になりやすいと言われています。また、歯周病で歯を失うことにより噛む力が低下し、認知症のリスクも上がります。血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。 ●糖尿病 歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになったのです。歯周病の治療で、糖尿病も改善することもわかってきています。
●誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎です。特に要介護の高齢者などは飲み込む力や咳反射が低下しているため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。その結果、免疫力が衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。原因となる細菌の多くは歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。
●骨粗鬆症
骨粗鬆症は女性に多くみられますが、中でも閉経後の骨粗鬆症はホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなると同時に歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、同時に歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ歯周炎の進行が加速すると考えられています。
●早産と低体重児
女性と歯周病の関係で注目すべきが、早産・低体重児出産です。重度の歯周病では、歯肉の血管から侵入した歯周病菌やサイトカインが血流にのって子宮に達すると子宮筋の収縮を起こして早産や低体重児出産になる可能性があります。最近の報告によると、歯周病にかかった妊婦さんに低体重児出産が起きるリスクは健常者の4・3倍程度と言われています。
【最後に】
このように全身の様々な疾患と深く関わる生活習慣病なので、歯周病を予防し、治療後は適切に管理して再発を未然に防ぐことが身体全体の健康維持につながるのです。いつまでも、元気に年を重ねていくためにも、歯周病と身体の関係について理解を深めていただき、お口の健康を維持して頂けたらと思います。
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