
唾液の分泌が体にもたらす影響について
●唾液について
口の中で分泌されている唾液について、普段意識することはあまりありません。ですが、唾液には健康に関わる大切な働きがあります。唾液の担っている役割と唾液が減少した時に起こることとその対策についてレポートします。
●唾液の分泌
唾液は成人の場合、一日あたり約1~1.5リットル程度分泌されます。ただし、加齢的な影響を受けやすく、30代をピークにして減少し始め、70代にはピーク時の約3割ほどにまで減少してしまいます。また、唾液の分泌量は食事中は増えますが、睡眠中には減少します。緊張すれば唾液量は減少して口が渇いてきますし、酸っぱいものを想像するだけで唾液は分泌されます。健康状態や年齢・性別などによっても個人差があり、唾液の質についても個人差があります。唾液の質は虫歯などにも影響しています。
●唾液のおもな働き
健康に関わる大切な働きをしてくれる唾液には、おもに7つの働きがあります。
①自浄作用:お口の中の細菌や食べかすなどを希釈し洗い流します。
②抗菌作用:様々な抗菌物質(リゾチームやペルオキシダーゼ)などにより、細菌の発育を抑制します。
③歯や粘膜の保護作用:唾液中のたんぱく質が被膜を形成して歯や粘膜を保護します。
④緩衝作用:酸性に偏った虫歯になりやすい口の中を虫歯になりにくい中性に戻します。⑤歯の再石灰化作用:脱灰により、歯の表面から失われたカルシウムやリンを補い、再石灰化させることで歯を修復させます。
⑥免疫作用:唾液中の抗体が口の中のウイルス、細菌と戦います。
⑦消化作用:唾液中の酵素(アミラーゼ)によりでんぷんを分解します。
このように唾液は様々な働きを担っていますので、この唾液が減ると起こりやすくなる様々な悪影響があります。まず、口の中が乾燥し食べ物が飲み込みづらくなる、口の中がネバネバする、口臭がきつくなる、話しにくくなるなどの不快感が慢性的に続くことがあります。唾液の分泌不足によって唾液が本来果たしている自浄作用が働かず、口臭・舌痛・口内炎の原因になったり、カンジダ菌による口内炎、虫歯や歯周病などにかかりやすくなる場合もあります。
●唾液を増やすために
唾液が減少することによる悪影響を受けないために、唾液を増やすためにできる5つのことがあります。
①水分補給:唾液は体内の水分と関係しています。体の中の水分が減少しているとそれに伴い、唾液も減ってしまいます。喉が渇いたと思えば、水分不足のサインかもしれません。水分を補給し、お口の乾燥を防ぎましょう。
②ガムを噛む:噛むという行為は、唾液腺を刺激し唾液の放出を促進します。ガムを噛むことも唾液を出すために有効な方法です。
③食事の時にしっかり噛む:噛めば噛むほど唾液はでます。少し噛んで飲み物で流して飲み込んでしまうことはよくありません。できるだけゆっくりと回数を重ねてたくさん噛むようにしましょう。
④舌を動かす:舌を動かすと舌の下にある唾液腺が刺激されますので唾液が出やすくなります。
⑤唾液腺をマッサージする:具体的には耳の下や顎の下を親指で円を描くようにマッサージし、刺激します。適度に刺激され唾液が出やすくなります。あくまで痛くない程度にしてください。
●日常的なケアの重要性
唾液は虫歯リスクを減らしてくれるだけでなく、口腔環境を整えることで全身の健康を守るとても重要な役割を担っています。それと同時に唾液に含まれている乳酸菌は体に悪い影響を及ぼす細菌を退治するためにも欠かせない存在です。口腔環境を改善して、感染症やインフルエンザの予防のためにも、正常な唾液の分泌を意識して生活しましょう。それには「生活習慣の見直し」や「乳酸菌の継続的な摂取」など、日常生活の中でできる工夫を続けていくことがなにより大切です。

院内では感染症対策を行っています。
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