story 4 彼がくれた不器用な思いを、ゆっくり噛み締めて味わった
「もう知らない」
そんな捨て台詞を吐いて家を飛び出したのはもう3時間も前のこと。同棲して2年、どうしていつもこうなんだろう。喧嘩のきっかけはいつだって些細なことだ。小さな火種がみるみる内に大きな炎となり、エスカレートしてしまう。少し頭を冷やそうと、車にエンジンをかけた。
目の前を照らしていた太陽もすっかり隠れてしまい、ずいぶんと遠くまで来てしまったなと気づく。帰る場所なんて他にはなく、あっという間に辿り着いた駐車場からは、部屋に灯る明かりが見えた。
できるだけ静かにドアを開けそのまま部屋にこもろうとしたが彼から呼び止められた。このまま意地を張っていてもしょうがない。リビングへ踵を返すとテーブルの上にはケーキがそっと置かれていた。
「…機嫌取りのつもり?」
「そう言うなよ。ごめん、俺が悪かった」
その言葉に素直に「うん」と言えない自分がまだいる。
「今日ホワイトデーだろ? ここのケーキ好きって言ってたの思い出してさ。ちょっと開けてみてよ」
長細いボックスをそっと開けるとチョコ特有の甘い香りに包まれる。
「このケーキ、日持ちするんだって。少しずつ食べるのもいいって聞いてさ。明日もこうして一緒に食べよ」

ひと欠片、口にしただけで広がる濃厚な甘さに頬がきゅうっと上がり、えもいわれぬ幸せに満たされる。あんなに怒っていたのにこれで許してしまう私も結局は甘い。それでもいい。このチョコレートのように、ときに甘くときにほろ苦く、共に歩む未来がずっと続いていけばいいのだ。

口いっぱいに広がるカカオの風味としっとり濃厚な口溶けにひと口で虜になる人気の一品。1週間日持ちするから、ちょこっとずつ味わって楽しむのも◎。フルーツや生クリームを添えてアレンジもおすすめ。ショコラの他、抹茶味もご用意。
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