筑豊でartする #1「お面を通して自身と向き合うアーティスト 髙津麦」
2023.08.10
筑豊でartする。筑豊には昔から多くのartが存在しています。このコーナーでは、筑豊地域のアーティストが集ったNPO法人アーツトンネルが独自の視点で、筑豊にあるartを紹介していきます。
筑豊でartする #1
お面を通して自身と向き合うアーティスト
髙津麦

自分の顔を隠す
髙津麦さんは、福岡教育大学に在学中、授業を通じてお面づくりを学んだ。それは、20歳を迎える髙津さんが、自分自身の性について、もっとも悩んでいた時だった。お面をつけることで、自分の本当の顔を隠し、違う自分に返信することができる。お面の在り方や役割について考えるようになった髙津さんは、以後、作品としてお面を制作するようになった。卒業制作では、全身が隠れるほど大きいお面を制作した。大学を卒業し、教員になってからも、髙津さんは制作を続けている。
自分は何者なのか?
トランスジェンダーであることに悩み続けてきた髙津さんにとって、お面の制作は自分自身との対話だという。自身の性別やそれに関わる人間関係は、髙津さんの感情を大きく揺さぶった。だから、どの作品にも、その時々の感情や想いが宿っているという。その感情や想いのほとんどはつらいものであるはずだが、髙津さんのお面は、不思議な形をして、どこか飄々としている。
赤・白・黒は生命を表す色
お面に使われる茶色やオリーブなどの自然な色合いは、土や墨など自然のものを使っている。それは、陶芸家である母の影響でもある。髙津さんは、幼い頃からずっと土から美しい陶器を作り出す母の姿を見てきた。また、お面に使われている赤・白・黒は生命を表す色なのだそうだ。もし仮に、赤は血、白は命、黒は死を表しているのならば、髙津さんは作品制作を通じて「性」だけでなく「生」とも向き合っているのかもしれない。
隠すことは逃げることではない
お面は自分の顔を隠すものである。しかし、お面をつけた自分は、顔を隠しつつも、この場所に、確実に存在している。つまり、この場所に、確実に存在している。つまり、この場所でしっかりと生きているのだ。お面を制作することで自分自身と向き合っている髙津さんは、この場所に存在することから逃げずに、まっすぐに顔を上げ、世界を見つめている。自身の性や家族、そして、他者とまっすぐに向き合い、髙津さんは、今日も子どもたちを導き、作品を制作し続けている。
【PROFILE】
髙津麦
1996年福岡県田川郡福智町に生まれ育つ。2019年福岡教育大学3年生の時にクラフトバンドでのお面作りと出会い制作活動を始める。現在は田川市で小学校教員をしながら制作活動、ワークショップをしている。