筑豊でartする #12「筑豊でartする子どもたち 佐土嶋洋佳」
2024.07.10
筑豊でartする。筑豊には昔から多くのartが存在しています。このコーナーでは、筑豊地域のアーティストが集ったNPO法人アーツトンネルが独自の視点で、筑豊にあるartを紹介していきます。
筑豊でartする #12
筑豊でartする子どもたち
佐土嶋洋佳

artする?
アーティストであり、50人以上の子どもたちが通う造形教室の先生でもある佐土嶋洋佳さんは「artすることの大切さを伝えたい」と話す。「artする」という言葉はない。一般的にartとは、絵を描く、粘土で形を作る、作品を鑑賞するようなことを指すが、それは小学校での「図工」の授業、あるいは、子どもたちの「遊び」や、美術館に行くことで行われる。しかし、彼女の言う「artする」はそれらの「言葉」だけでは説明できない。「artする」とはartを通じて行われるあらゆることによって、自分自身の中にある「気持ち」や「思考」と向き合うことだと彼女は考える。
自分と2人きりになる
画家兼教師の父とデザイナーの母のもとに彼女は生まれた。実家には、両親の絵画や作品がいくつも飾られている。彼女はその家で、高校卒業まで過ごしたあと、美術を学ぶため福岡教育大学に進学した。「自然と美術の方に向かった」と当時を振り返る彼女はそこで鉄の彫刻家であり、当時、同大学の教授を務めていた阿部守先生と出会う。「先生からは技法や知識だけでなく、作品制作を通じて【自分の内面】を問い続ける姿勢を学びました」そう話す彼女は、阿部先生のもとで作品を制作し、自分を表現したことで初めて「自分と2人きり」になれたのだそうだ。「自分と2人きりになる」それは多様化し、情報過多の現代社会において、大切なことなのかもしれない。
教育普及で社会とつながった
大学卒業後、彼女はアーティストとして活動を開始。福岡県内外での展覧会やアートプロジェクトにインスタレーション作品をいくつも出展した。この頃、地元田川市美術館が職員を募集していることを知り応募。彼女はそこで絵本や美術作品を題材にした子ども向けのワークショップなど教育普及活動に携わった。アーティスト活動に専念していた彼女にとって、美術館の教育普及活動は「自分と社会がつながったように思えた」という。教育大学での経験を活かし、子どもたちの興味を高めるワークショップを企画。その中で、彼女が作品制作の中で大切にしている要素である「自分と2人きりになる」ための仕掛けを盛り込んだ。
自分と出会うため
田川市美術館で6年半勤務し退職後、彼女は「ずこうしゃこどもアートスタジオ」を開設。造形教室である同スタジオが掲げる「つくるはみんなのなかにある」という言葉には、子どもたち自身の中にある「気持ち」や「気づき」を大切にしたいという想いがある。同スタジオにはアーティストのアトリエが併設され、筑豊地域のアーティストたちの拠点になっている。「子どもたちには原画や彫刻など生の作品を観たり、様々なアーティストに会ったりして、いろんなことを感じてほしい」この夏、彼女は、お面をつくるアーティストと振付家によるワークショップを企画している。彼女のワークショップで筑豊の子どもたちは、どんな自分に出会えるだろうか。
【PROFILE】
佐土嶋洋佳
誰かがそこに在ること、居たこと、記憶や時間と空間の関わりを、布や糸、ものを使った造形作品や絵などで表現する。
作家活動の傍ら、6年間の美術館勤務を経て、2019年に造形教室「ずこうしゃこどもアートスタジオ」をオープン、代表を務める。
「KAWARADAKE」グッズや、「へいちく応援ワンカップ」などのデザインや地域を掘り起こす展覧会やワークショップの企画など、地域に根ざした活動も行う。