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by CHIKUSKI WEB 編集部

「がんと循環器医療の融合をめざす“腫瘍循環器病学”とは?」
(1) はじめに
腫瘍循環器病学と聞くと、心臓や血管にできる腫瘍についての学問のようですが、違います。もちろん、心臓や血管にも腫瘍ができることがありますが、非常に稀です。今回、皆さんにご紹介するのは、腫瘍(がん、肉腫など)の診断と治療を専門とする「腫瘍医」と心臓・血管の病気の診療を専門とする「循環器内科医」が協力して、現時点での最善の治療を患者さんに施し、生命予後と生活の質の改善をめざすという新しい学問です。
(2) 腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)が何故必要なのでしょうか?
2017年の日本人の平均寿命は、女性87・26歳(世界第2位)、男性81・09歳(世界第3位)と過去最高を更新しました。依然として、がんが日本人における死因の第1位ではありますが、がんに対する診断技術、治療の進歩は目を見張るものがあり、外科治療、化学療法、放射線療法それぞれに革新的進歩ががん患者さんの生存率を大幅に良くしたことも平均寿命の延伸に貢献しているものと思われます。一方、以前からがんの化学療法や放射線療法に心臓や血管への副作用があることは知られていました。がん患者さんの生命予後が改善し、がんサバイバーとなられた方が、がん治療に伴う心臓の機能障害(心不全)、刺激伝導系障害(不整脈)、高血圧、動脈硬化、血栓塞栓症で亡くなられているということが問題になってきたのです。米国の研究では、乳がん患者さんの診断後9〜10年目以降は、乳がん再発による死亡を心血管疾患による死亡が上回り死因の第1位になったとのことです。
そのため、腫瘍内科医、外科医、放射線科医と循環器内科医が協力してがん患者さんの治療に取り組む必要性が生まれ、腫瘍循環器学が誕生したというわけです。
(3) 腫瘍循環器内科医の役割
本庶佑先生のノーベル生理学・医学賞受賞が大きく報道されました。先生の研究が基となって、分子標的薬ニボルマブやペンブロリズマブが製品化されました。これらの新しい抗がん剤にも、心臓に炎症を起こして心臓の収縮力を低下させたり(心筋炎)、血圧を上げたり、血栓塞栓症を起こしたりする副作用があることが報告されています。
今まで、循環器内科医は、がんの診療に積極的に関わることは少なかったように思います。しかし今後は、がん治療の予定のある患者さんに対して、がんの治療を心臓血管の合併症で中断することができるだけないように、腫瘍内科医、外科医、放射線科医と診療情報連携を密に行って抗がん剤治療前から心機能検査を行い、治療中は経過観察と心保護のための治療を行い、早期に合併症を発見して心不全、冠動脈疾患、高血圧、不整脈、血栓塞栓症を的確に治療していくことが重要な役割になってくると思われます。
(4) おわりに
腫瘍循環器学は、まだまだ始まったばかりの分野です。腫瘍循環器を専門にしている医師がいるわけでもありません。それは今後の課題でもあります。しかし、がんを抱えた患者さん、がんサバイバーの患者さんたちは、私たちかかりつけ医の外来に、昔から、ごく当たり前に受診されているわけです。私は、気持ちを引き締めて、腫瘍内科医、外科医、放射線科医そして連携していただいている先生方とより緊密な診療連携をとって、よりよい診療を提供していきたいと思います。
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