筑豊でartする #4「『ひまつぶし』に隠された 本当の想い エノビさんと青柳貴哉」
2023.11.09
筑豊でartする。筑豊には昔から多くのartが存在しています。このコーナーでは、筑豊地域のアーティストが集ったNPO法人アーツトンネルが独自の視点で、筑豊にあるartを紹介していきます。
#4 「ひまつぶし」に隠された 本当の想い 「エノビさんと青柳貴哉」
「夢はありますか?」
「ちょっと、路上販売を、一回やりましょう」代々木公園の片隅に座り、スケッチブックの絵を見ていたホームレスのエノビさんに、青柳貴哉さんはそう提案した。「そうしますか、お客さんがいればね」とエノビさんは顔を上げ、青柳さんの方を見た。20歳の頃、沖縄から上京したエノビさんは現在66歳(2023年10月現在)。ホームレスになったのは、社会に馴染めず、先が見えなくなった時、公園で炊き出しに出会ったことがきっかけだったという。青柳さんから「夢はありますか?」と訊ねられた時、「ひまつぶしで絵を描いている」と取り出したスケッチブックには、円などの幾何学的なモチーフや石のような模様が繊細に描かれていた。
時間と熱量の賜物
1枚描くのに最低でも10時間。すべて鉛筆で描かれたその絵は、スケッチブック40冊に及ぶ。エノビさんは「できればね、絵を描いて、生活したいなってのはね、ちょっとある」そう謙虚に言ったが、その絵には、とてつもない熱量が込められているように見えた。青柳さんは、後日、再度エノビさんのもとを訪れ、絵の路上販売を提案した。それがきっかけとなってエノビさんの絵の活動は、現在も続いている。
男性が怒鳴った理由を探して
ある時、ゴミを漁っていたホームレスの男性にチョコレートをあげようとした青柳さんは、その男性から大声で怒鳴られてしまった。「あの人はなんで怒鳴ったんだろう?」その疑問に対する答えを探すため、青柳さんはホームレスの取材を始めた。「食べ物を探しているから、食べ物をあげた」「よろこんでもらえると思った」それは表面的に見れば、当然のことのように見える。しかし、実際は違った。表面だけ見ても、「本当のこと」はわからないのだ。
本当のことを知るために
「ひまつぶしで描いている」とエノビさんは言った。しかし、本当のことはわからない。本当のことを知るためには、真剣にその人と向き合い、それを知るために自分自身が行動するしかない。ホームレスと対峙する青柳さんは、その姿勢を崩さない。2022年12月、エノビさんは大手レコード会社から依頼を受け、お仕事として絵を描き、また、2023年6月には都内のギャラリーで個展を開催した。「本当の想い」がなければ、それらは実現しなかったはずだ。エノビさんは今日も絵を描き続ける。そして、青柳さんは今日もホームレスと対峙し続ける。表面的に見えるすべてのものの「本当のこと」を知るために。
【PROFILE】
エノビさん
田川市出身の青柳貴哉さんが運営する、登録者16.9万人(2023年9月現在)を超える人気YouTube番組『アットホームチャンネル』にて特集されたホームレスの1人。
青柳貴哉
1981年田川市出身、旧猪位金小学校の卒業生。2020年よりYouTube番組『アットホームチャンネル』を始める。2023年にはKADOKAWAから『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』を出版。
【CHECK IT OUT !】
「絵描きのホームレス エノビさんの個展 in 福岡」
青柳さんの故郷・田川市にある「アーツトンネルGALLERY」にて、関東以外で初となる『絵描きのホームレス エノビさんの個展in福岡』を開催します! 関連イベントとして、最終日にトークとパーティーも開催!詳しくは展覧会特設WEBページをご確認ください。
イベント詳細ページは
こちら!