『常設展は「郷土料理」みたいなもの』嘉麻市立 織田廣喜美術館の魅力。
2024.10.10
旧碓井町出身の画家・織田廣喜の作品を時系列に沿って展示した常設展や、ゆかりのある作家が彩る企画展示室など、全部で5つの展示室から構成される美術館。

絵画作品の他、写真家・林忠彦氏や山口利明氏が写す織田氏の写真や、妻・リラ氏や長男・廣比古氏、次男・きじ男氏の作品なども展示している。

代表作である「讃歌」の一部。戦後間もなくお金がなかった当時、リラさんと一緒に古い絵を水に浸けて絵の具をはがし、キャンバスを張り合わせて作った500号の大作だ。当時の碓井町長・松岡俊雄さんが「この絵は生まれ故郷にあるべきだ。他ではおかしい」と感激。その熱い想いを受け取った織田氏により碓井町へと寄贈された。

開館当初から織田廣喜美術館に携わってきた有江俊哉さん。「常設展は『郷土料理』みたいなものなんです」。都会的な佇まいから飛び出した「郷土料理」というワード、そのギャップに心を掴まれる。「我々の仕事は、織田廣喜のありとあらゆるものを収集し、調べあげ、そしてこれから先も残していくというもの。博物館なんかも同じです。何でもかんでも保存しているわけではなく、その土地として集めるべきもの、残すべきものを吟味している過程があります」。

織田さんにもよく会っていたという有江さん。「アトリエに行ったら織田さんのお手伝いさんにゴミ箱の中のもの、絵の具とか筆とかを取っておいてもらうようによくお願いしてたんです」。

平和祈念館の青山さんからも、まず最初に放たれたのは「なぜこの碓井に平和祈念館があるか、わかりますか」というクエスチョン。郷土館の伊藤さんも、遠賀川の上流域に位置する嘉麻市として想像できることを、展示された遺物に思いを馳せながら説明してくださる姿が印象的だった。

期間限定の企画展などがあっていたらどうしても見過ごしてしまいがちだが、実はその土地のアイデンティティが詰まっている常設展。「なぜこの場所でこの展示?」自ら問い、眺めてみることで、来る時と帰る時の街の景色が違って見える。訪れた地域への新たなアプローチに気付かされ、まだ見ぬ地域の常設展へも足を伸ばしたくなった。
【嘉麻市立織田廣喜美術館】
嘉麻市上臼井767/0948-62-5173 9:30~17:30(入館は〜17:00)/月曜日定休(祝日の場合は翌日平日)館内整理特別休館日あり/Instagram@
odabi_official
嘉麻市立 碓井平和祈念館
「大きな出来事だけでなく、とある1つの町として経験した戦争の記録が残っています」と学芸員の青山さん。女性や子どもなど庶民の暮らし、BC級戦犯や炭鉱など、5つの視点に分けて展示。図書館には織田廣喜さんの他、平和についての本も多い。

巣鴨プリズンで最後に処刑された7人の戦犯の1人・藤中松雄さんは碓井町出身。「戦犯の歴史、そして藤中さんの遺書を通して平和について考えるブースを作りました」と青山さん。
【嘉麻市立 碓井平和祈念館】碓井図書館2階/0948-62-5720/9:30〜17:30 (日・祝日17時閉館)/月・第4木曜日定休

【碓井図書館】10:00〜18:00(日・祝は〜17:00)/月・第4木曜日休館
嘉麻市 碓井郷土館
縄文時代から碓井にまだ駅や炭鉱があった近代までの歴史を、時間軸に沿って展示。近所に祠もある「皿屋敷伝説」など、碓井にまつわるコーナーも。
【嘉麻市 碓井郷土館】美術館入って右奥/0948-62-5720/9:30〜17:30/月曜日定休(美術館に準ずる)