「牛牛うどん」のぎゅうぎゅうに詰まった、愛される理由を探して。
2024.09.12
筑豊の玄関口である八木山峠の麓で、行く人来る人の胃袋を掴み続けること30年。テンポよく刻まれ続ける「早い・安い・うまい」の三拍子で、伊川のみならず飯塚のソウルフードとなった最たる一杯に迫る。
伊川交差点の一角にある駐車場から、いつも目まぐるしく出入りする車…その凄まじい回転率の中でうまく取材ができるだろうかと内心緊張しながら暖簾をくぐった。お昼時を避け14時半に伺ったが、おそらくお昼のタイミングを逃したお客さんたちがお腹を空かせて絶え間なく訪れる。
入店後、食券を渡して、セルフサービスのお水を注いで、着席するや否やもう現れている、なんなら先に到着している一杯。カメラマンが「速い、速すぎる」と必死で追うもブレてしまうスピード感ながら、気づけば丁寧な一杯が次々と出来上がる。
それぞれのお椀をのぞくと、うどんと丼の割合は半々くらいで(うどんと丼のダブルコンボで注文する猛者も見受けられる)、もれなくそのどれもに「牛肉」がたっぷり乗っている。

肉うどんにごぼう天とわかめもトッピングされた人気メニュー「ミックス肉うどん」800円。
「〈牛がぎゅうぎゅう〉で牛牛うどんです」そう教えてくれたのは店主・須尭初子さん。次々差し出される食券を高速でさばきながらも、一杯一杯には丁寧な気持ちが宿っているように見え、その合間合間で時間を作りながらにこやかに取材にも応じてくださった。
「昔、夫が肥育農家さんと肉料理店の仲介業をやっていて、私も側で牛をよく見ていたんです。一頭飼ってみたこともあるんですよ」。そうして育まれた牛への目利きを活かし、肉うどんのお店としてオープン。開店から程なくして、うどん上の牛肉をご飯と愉しめる牛丼も登場した。

大きな電気釜で炊いたお米のふんわり食感と、牛肉のホロホロを生卵で絡める至極の一杯。「牛丼」750円(生卵は+100円)
地元民だけでなく、働く車も多く通る八木山峠の麓において「早く・安く・うまく」スタミナをいただける一杯は有り難いの一言。卓上のネギ・天かす・紅生姜を好きなだけ入れられるのも開店当初から変わらないシステムで、飽きることなく味変を楽しむことができる。気づけば900件以上の口コミも集まる、飯塚のソウルフードとなった。
「一度に多く煮込む方が美味しいんですよ。一気に5キロ煮ます。そうすることでそれぞれの牛肉が持つ旨味がお互いに味付けをし合う。お米もちょこっと炊くよりたくさん炊いた方が美味しいのと同じです」。これまでただひたすら旨い! とかきこんでいたが、やはりその一杯の中には愛される工夫が丁寧に施されていた。「一見わかりにくいですけど、柔らかくなるまで炒めたタマネギも実はたくさん入ってるんです。更に甘みが出る。筑豊の人は昔から甘めの味付けが大好きですからね。その子どもや孫も大体みんな甘くて濃い味が好きになっていくんですよ」。
そんな初子さんの牛肉の味付けは、従業員の誰もが再現できるよう、明確にレシピ化されている。「カホテラスの牛牛うどんでもうちの牛肉が食べられます」。フードコート内にできた、いわば2号店となる厨房に立つのは、息子・奉文さん。午後からの活力となるスタミナ! な味付けはそのままに、本店にはない「カツカレーうどん」などの限定メニューも展開されている。
「麺や出汁へのこだわりは、正直そんなに無いんです。ありすぎてもお肉が薄れちゃうので」。こだわりを一点に集中させることで紡がれてきた「早い・安い・うまい」の三拍子。量だけでなく、「牛肉を美味しく食べてほしい」そんな思いも、ぎゅうぎゅうに詰まっていた。
〜Information〜
【牛牛うどん】
八木山峠につながる道沿いの大きな看板が目印。店主・初子さんは82歳を迎えた今も厨房に立ち続ける。店名的にまずはうどんを食べておきたいところだが、「牛丼食べて今日も 元気モリモリ」と石碑(写真右側)にして店前に飾ってあるほど、牛丼も等しく名物。テーブル席はなく、厨房を正面・右横・左横から囲むようにコの字型のカウンターが配置されている。小さな子どもからおじいちゃんおばあちゃんの代まで、各々ストイックに丼の美味しさに向き合うスタイルだ。
飯塚市伊川429-1
0948-21-2904
11:00〜20:00
水曜日定休