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里山が、世界とつながる!? 福智町「天郷醸造所」が見据える、酒造りの未来。

2025.07.29




「福智町に、新しい酒蔵ができる」

この噂を耳にした人もいるのではないでしょうか。


今年4月にクラウドファンディングを終えて、醸造所(建物)が完成。
秋からの販売を目指して、設備を整えている⋯という状況です。



天郷醸造所
更地だったところに立派な建物ができたので、いよいよ形になってきたと思いきや、代表の中山さん曰く「まだまだ、いまは1歩目というよりも、0.1歩目をようやく踏み出したくらいの感覚です」とのこと。その真意とは⋯!?

醸造所を見学しつつ、展望を伺いました。




代表の中山雄介さん。コカ・コーラ、アマゾンジャパン、楽天など名だたるグローバル企業で食品飲料や酒類事業に携わった経歴の持ち主で、起業した会社では日本全国の酒蔵と関わり、日本酒業界に深く通じているお方です。(そして福智町のご出身!)



 

ゼロから設計した「未来の酒蔵」


━━まず率直に、醸造所が完成したお気持ちとしてはいかがですか?  ここに至るまでも相当な道のりだったのかなと

建物が形になって、進みだした実感はありますがまだまだ全然、1歩目どころかまだ0.1歩目くらいの感覚です。


━━0.1歩目ですか! すごく立派な醸造所が完成しましたが、販売はまだこれからですか?

今は設備を入れて準備を進めていますが、肝心の「酒類製造免許」がまだ下りておらず、仕込みのスタート待ちの状態です。免許さえ下りれば一気にスタート!というところではあるのですが⋯早ければ8月中旬の取得見込みで、秋ごろには初出荷が可能になる想定です。




━━ 中を見学させていただくと、想像していたよりもコンパクトにまとまっているように感じました。

そこが設計のポイントでもあって、2025年に新たにはじめるため「今とこれからの時代に最適化した酒蔵」をゼロから作ることができたんです。全国の酒造りを見てきたなかで学んできたエッセンスを詰め込んでいて、コンパクトにまとめることにこだわりました。原料を移動させる手間を極力減らして、動線も徹底的に追求しています。



━━ 先日嘉麻市の方で、江戸時代から続く酒蔵を見学する機会がありました。2階でつくった原料を1階に落とす機構があったりと単純にワクワクはしましたがたしかに進化した技術や機械は踏まえられていないですもんね。

仰る通りです。また、昔ながらの蔵だと寒い時期しか仕込みができませんが、ここでは年中安定して醸造できるように、温度管理を徹底できる断熱壁や冷蔵設備を入れました。



さらに、井戸も醸造所のために新たに掘って、水源を確保しています。酒造りに使う水は非常に大事なので、ここでくみ上げた水で仕込むのも大きな特徴のひとつですね。

 

 

 

福智町の地域資源を循環させる「小ロット」と「瞬間冷凍」

━━他にも設計・設備面でこだわったポイントを教えてください。

天郷醸造所の酒造りでは多彩な副原料を活用するため、小ロットで仕込める設備を導入しています。通常はアコーディオン式の大きな絞り機を使いますが、それだと果物や米の香りが混ざってしまうので。



副産物の酒粕は、副原料に使用するフルーツ農園の畑などの土壌改良に再利用しますし、発酵に使った布の管理も全自動で洗浄できる仕組みにしています。



また、瞬間冷凍も技術向上の恩恵を受けることができています。果物や米を絞った瞬間に-30〜-70℃で冷凍して、酵母や細胞が壊れず、解凍後もほとんど味や香りが変わらず鮮度を保てるんです。これによって、遠方や海外でも「旬のままのお酒」を届けられます。

「原料」から作り、世界中へ届ける。

—— お酒が、福智町の魅力を伝えるツールや媒体のようにもなりそうですね。

まさにそういったイメージで、瓶のラベルに非接触ICチップを付けて、読み込むと「どこの畑でどう育った原料か」が全世界の人に伝わる仕組みを考えています。土壌データや栽培履歴を見える化すれば、農家さんがどれだけこだわって育てているか、ちゃんと評価されると思うんです。



中山さん曰く機械のみならず布の選定も商品のクオリティを左右する部分なのだとか


将来的には自社で米も栽培できるよう構想を練っています。いま米が不足して価格が高騰している問題もありますし、自分たちで安定的に生産できれば品質も守れます。この場所から一貫して「無農薬でつくる・鮮度を封じ込める・物語を伝える」仕組みを完成させたいんです。

酒蔵/ 醸造所を超えた「体験の拠点」

—— お酒を試飲できたり、宿泊できる場所をつくる構想も楽しみです。

最初はクラウドファンディングの返礼品を中心に販売を始めますが、いずれは泊まれる施設や体験プログラムも用意するつもりです。

醸造所は、かつて町営青年の家として使われていたが、取り壊された後、何十年も使われていなかった場所に一から建設した。



現在は未整地だが、写真奥に見える草むらのスペースも取得済。醸造所に隣接した施設をつくる予定。

この土地ならではの上野焼や刀剣磨き体験、農業体験などもやりたいですね。宿泊は和室にするのかキャンピング仕様にするのか検討中ですが、ここでしかできない体験を用意します。

DXが拓く、伝統産業の未来

——まだ今が0.1歩目、と仰る意味がわかってきました。目指している場所が、まだまだ遠いところにあるという。

全国に目を向けると後継者不足で廃業寸前の酒蔵がたくさんあります。福智町での取り組みをひとつのモデルケースとして、廃業危機に瀕している酒蔵のレシピやノウハウをAIに学習させて、別の場所で再現できる仕組みも作れるように今動いていて。
徹底的に数値化、見える化していくことで、その土地にしかなかった価値を残せるかもしれない。

ドイツでは伝統工芸のDXを進めて、巨大な事業に成長させた事例もあります。僕たちも提携して、ノウハウを学んでいるところです。全国の酒蔵や、お酒以外でも地域文化でありながら家族経営になっているような事業・産業を次世代に残していくことが最大のゴールでもあります。


——地域メディアとして話を伺いましたが、雑誌でいうと『WIRED』等にも載せることができそうなスケール感のお話をさらっと聞いてしまった気がします...!!! 今後も楽しみにしております!

本当にまだまだこれからですが、ぜひご期待ください!






天郷醸造所 Instagram
※製造拠点のため立ち入りや見学は今のところできませんが、Instagramなどで情報を発信されておりますので、ぜひぜひチェックしてみてください
 

この記事を書いた人

CHIKUSKI WEB 編集部

CHIKUSKI WEB編集部です!筑豊エリア内の気になる情報を掘り下げて、お届けしています。

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